レビー小体型認知症(DLB)は、レビー小体と呼ばれる異常なタンパク質の塊が、脳内のニューロンに出現して起こります
レビー小体型認知症は記憶障害や理解力・判断力の低下などアルツハイマー病に似ている症状が現れますが、決定的に異なる点は、病気の初期から図形描写が障害されることが多くみられさらに、しばしば子供や小動物、虫などの幻視が現れることです
また、うつ病やパーキンソン病に似た症状も伴います
もくじ
レビー小体型認知症の症状
レビー小体型認知症(DLB)の3大徴候は幻視、記憶障害、パーキンソニズムです
くり返し現れる幻視は、レビー小体型認知症の重要な手がかりです。子どもや小動物、虫などがリアルに何度も出現します。また、家のなかに他人がいるという妄想や、夫や妻が偽者であるという妄想も多いです
脳幹に障害がおよぶと、パーキンソニズムも現れます。パーキンソン病に多い振戦(手足の震え)はまれで、固縮(筋肉のこわばり)や、無動(運動量が減り、動作が遅くなる)が中心です
固縮があれば、他者がレビー小体型認知症患者の関節を動かしたときに抵抗を感じます。とくに、動かしはじめに現れやすいです。無動の場合は、動作が緩慢になり、まばたきが減少します。表情も乏しくなります。記憶障害は比較的軽く、初期にはないこともあります
認知機能や覚醒レベルの動揺も、レビー小体型認知症の特徴です。日にちや時間帯によって、意識がしっかりしているときと、ウトウトしているときがあります。それにともなって認知機能も変動し、認知機能が高いときと、そうでないときの差が生じます
また、レム睡眠時行動障害(RBD)も特徴的な症状です。
レビー小体型認知症では、筋肉の緊張を抑える機能が低下し、レム睡眠(浅い眠り)時にも筋肉を動かすことができます。そのため、夢に反応して叫んだり、暴れたりします。
発症の数年〜数十年前からレム睡眠時行動障害が現れることもあり、前駆症状としても注目されています
さらに、初期のうちから、便秘や起立性低血圧などの自律神経系の症状も目立ちます
レビー小体型認知症の典型的な症状
・初期に幻視を見る
・気分や態度の変動が大きい(1日の中でも穏やかな状態、無気力状態、興奮状態、錯乱状態を繰り返す)
・レム睡眠行動障害(夢を見て大声で怒鳴ったり、暴れたりする)・うつ症状・自律神経障害・湿疹など
アルツハイマー型認知症と似た症状
・記憶障害
・場所が認識できず、迷子になる
・判断力の低下・感情的になりやすいなど
パーキンソン病と似た症状
・繰り返す転倒・失神
・動作が緩慢になる
・筋肉がこわばる
・手足が震える
・姿勢反射障害(転倒しやすくなる)
・嚥下障害など
レビー小体型認知症の特徴
レビー小体型認知症(DLB)の特徴は、
①繰り返し出現するリアリティーのある幻視
②注意や意識清明度の著明な変化を伴う認知機能の変動
③特発性のパーキンソニズム
であり、以上の特徴的な症状が他の認知症とレビー小体型認知症を見分ける手がかりとなっています
レビー小体とは、1912年にドイツ人医師レビーが、パーキンソン病の患者の脳に発見した異常構造物です。パーキンソン病は脳の変性疾患のひとつで、レビー小体は、長いあいだ、パーキンソン病特有の病理所見だと考えられていました
しかし、1976年に歩行障害などのパーキンソン病の、症状(パーキンソニズム)と認知症を合併する症例で、レビー小体が出現していることがわかりました
このことは世界的に注目を集め、1996年に、レビー小体型認知症として国際的な診断基準が確立されています
レビー小体は、パーキンソン病では脳幹だけに出現しますが、レビー小体型認知症では、脳幹だけではなく、大脳皮質全体に見られます。そのため、体をスムーズに動かせなくなる「パーキンソニズム」のほか、嗅覚障害や幻視などもみられます
また、脳内の情報伝達を担う神経伝達物質にも変化が生じます。パーキンソン病ではドパミン、アルツハイマー型認知症ではアセチルコリンか減少しますが、レビ—小体型認知症では、その両方が減少します
とくに、アセチルコリンの減少の程度は、アルツハイマー型認知症よりも大きいとされています
その一方で、脳の萎縮は非常に軽く、記憶障害は軽度のことが多いです
うつ病と間違えやすい認知症
レビー小体型認知症の多くは、70代80代と高齢で発症します。男女比は2対1で、男性のほうが多く、生まじめで勤勉な性格の人に多い傾向があります
生真面目な男性に多いレビー小体型認知症
アルツハイマー型は元気で明るい印象ですが、レビー小体型認知症は暗く無気力でうつ傾向が強いです。これは、脳の興奮度を調節するアセチルコリン、気分に関与するドパミンの両方が減っているためです
また、レビー小体型の約70%はせん妄とよばれる精神症状を合併しているという報告もあります。昼夜逆転したり、興奮して歩き回るなど、不穏な行動が現れます。
うつ病や他の精神疾患と誤診されることもあますが、三環系抗うつ薬で身体機能が低下しやすいため、鑑別が重要です。
遺伝では起こりづらい病気
ほとんどが孤発性で*家族性は数%未満
レビー小体型認知症は、ほとんどが遺伝とは関係なく発症する孤発性です。遺伝で起こる家族性の割合は不明だが、パーキンソン病の家族性が5%未満ということから、レビー小体型も同程度と推測されます。
認知症とうつ病性仮性認知症の違い
高齢者のうつ病は認知機能障害があらわれることがあり、仮性認知症と呼ばれます。
うつ病性仮性認知症 | 認知症 | |
初めの症状 | 気力の低下、気分の落ち込み | 物忘れ |
経過 | 持続性(症状不変) | 進行性 |
認知機能障害
(症状の自覚・記憶障害・注意、集中) |
自覚症状が強い
短期・長期記憶が同程度に障害される 注意・集中が保たれる |
自覚は少ない
短期記憶に障害が強い 注意・集中が障害される |
摂食状況 | 食欲不振・拒食 | 障害なし、過食、異食 |
睡眠障害 | 不眠、早朝覚醒 | 進行すると昼夜逆転 |