【入院の基準】認知症患者はどんなときに入院する?

認知症高齢者が精神科や神経内科の外来に通院している時に、精神症状の悪化、身体合併症の出現などにより入院を考えなければならない場合が出てきます

そのまま通院でよいのか、入院させるべきかの判断に迷うことがあります

認知症高齢者はどんなとき入院するのか(入院の基準)

入院の基準

基本的にはできる限り入院は避けるべきです

つまり、入院という環境は、認知能高齢者にとってあまりにも変化が大きすぎ、現在の精神状態をより悪化させることが多いからです

家具などいっさいなく、スチールのべツドと床頭台だけという単調な空間は、これまで生活してきた環境とはあまりにも違いが大きすぎます。しかも、身体的疾患のために採血やエックス線などの諸検査を受けながら安静を強いられる状況では、認知症高齢者のとまどいは想像以上です

しかし、基本的には入院は避けるべきですが、疾患や状態によっては外来通院では限界があり、入院せざるを得ない状況もあります

認知症で入院しなければならない基準

身体要因 外科的手術(急性硬膜下血腫、急性胆のう炎など)脱水、栄養不良(水分・食事摂取低下)

意識障害(脇血管障害、重症肺炎など)

精神要因 高度な不穏行動(暴力、徘徊)著明な幻覚・妄想極端な不潔行為
介護者要因 介護負担の増大(介護者の減少、被介護者の増加)介護者の不眠

身体的疾患について入院治療が必要であると担当医が判断した場合には、もちろん入院適応となります

しかし、入院しても認知症の高齢者は安静が保てずに点滴などのラインを自分で抜いてしまったり、落ち着かずに病棟内をうろうろと歩き回り、ほかの患者が安静を保てないなどの苦情が出たりして、結果的に入院困難となってしまいます

精神科病棟に入院も

精神科病棟に入院

認知症では疾患的には入院適応であっても治療困難ということで、一般の総合病院ではなかなか認知症高齢者の入院は受け入れたがらないのが現状です

このような場合、理想的には精神科病棟に入院して、精神科医と内科医または外科医が担当して治療していくというチーム医療が望ましいです

まず身体的疾患において、①外科的手術が必要な場合、②水分・食事摂取ができない場合、③意識障害がみられる場合は当然入院が必要となります。

また肺炎が疑われた場合、体温39℃以上、脈拍130回/分以上、呼吸数30回/分以上では重症に分類され入院が必要となります

精神症状においては身体的疾患ほど絶対的な基準はないですが、家庭での介護のマンパワーがどの程度かで入院の必要度が変わってきます。ただ、いくら介護者がいるからといってもその人達が眠れないという状況になれば、一時的にでも入院を考慮すべきです。また、家族に対する暴力行為や極度の不潔行為が見られる場合や、食事や水分を何日も拒否する状態が続く場合には入院が必要となります

本人が入院を拒否したら

一方、本人が入院を拒否するという場合があります

早めの治療や検査の必要性をどんなに説明しても、病識が欠如しているために入院拒否は当然起こり得ることです

しかし、いくら本人に病識がないからといって、はじめから有無も言わさず強制入院させるべきではありません。可能な限り今の身体的状態や検査の必要性の説明・説得を試みるべきです

病識はないものの、「何となく体が不調である」r自分のことをみんなが心配している」という「病感」は見られ、「入院すべきである」と強調せずに「入院して元気になりましょう」と共感、同意を求めるような誘いをするのも1つの方法です

なお、精神科への入院治療が必要であるにもかかわらず本人が入院を把む場合は、家族の同意があれば、本人の同意が得られなくても入院(保療保護入院)させることはできるので、入院について保健所・市町村保健センターや精神科専門医に相談するとよいでしょう

入院しない場合でも

入院しない場合

認知症は脳の器質的障害による進行性の疾患であり、現在のところ根本的治療法はなく、機能低下は回復不能です

現存する機能を最大限活用しながら精神面においても身体面においても現状維持に努めます

日常的に行っている計算問題や書き取り演習、デイサービスでのさまざまな行事などを家族が過度に期待して、「1年も通っているのになかなかよくならない」「もっと回数を増やしてもらえない力」と考えたりします。機能回復は困難であり、「わかってもらう、わからせる」という期待はかえって本人を叱咤激励してしまうことになります

日常生活において着替え、食事、入浴などを規則的に行い、ー日の日課を決めておきます。高齢になればその人なりの生活パターンというものができており、認知症になってもそのパターンに沿った生活リズムを送るよう努めることが大切です

認知症が進んでくると幻覚・妄想や不穏行動などが認められる場合があります。もの盗られ妄想や興奮状態が起こった時、「なぜ家族のものを犯人と考えるのか」「どうしてわからないのか」と認知症高齢者の行動を家族が理解しようと努めますが、明らかな原因や理由があってそうした異常行動が起こるのではなく、脳の器質的障害に伴う症状であることを理解しましょう

したがって、ある程度以上の症状が認められた場合には家族だけで頑張らないで、ー時的にでも薬物療法や入院治療を受けるべきです

また、介護保険制度のホームヘルパー派遣、デイサービスやショートステイなどを利用して、家族自身もリフレッシュすべきでしょう

認知症高齢者の対応の原則

  • 機能低下は回復しない
  • わかつてもらおう、わからせるは厳禁
  • 生活にメリハリをつける
  • 医学的対策(精神科、神経内科)
  • 根本解決でなく、あつかいやすさ
  • 自分だちだけで頑張らない(公的制度を利用)
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