前頭側頭型認知症(FTD)の原因、特徴、症状【ピック症】

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することが原因で起こります。

前頭葉に異常が生じると主に人格障害が起こり、側頭葉に異常が生じると記憶障害が起こりますが、初期では物忘れなどの記憶障害は現れにくく、この点がアルツハイマー型との大きな違いといえます

前頭側頭型認知症の症状

前頭側頭型認知症の症状

前頭側頭型認知症の主な症状は以下の通りです

・落ち着きがなく、つねにキョロキョロしている

・服装などが派手になって、やたらと買い物をするようになる

・逆に、着るものや身だしなみに無頓着になり、不潔でも平気でいる

・抑制が欠如し、遠慮がなくなる

・悪気なく、他人のものをとったり、食べたりする

・何かに関するこだわりが異常に強くなる

・状況とは関係なく、いつも同じフレーズを繰り返しいう(滯続言語)

・暴力行為や悪ふざけをするようになる

・つねに同じ場所に座る、歩く、毎日同じ料理ばかりつくるといった常同的行為

・感情が鈍くなり、他人に共感することや感情移入ができなくなる

・言葉の意味、特に物の名前の意味することがわからなくなる

・言葉がより短く、内容も乏しくなる

・相手の言葉をオウム返しにする

・相手の動きを無意識にまねる

・鏡合わせのように左右対称に手を動かす

原因の95%以上を占めるピック病

ピック病

前頭側頭型認知症(FTD)には、前頭葉変性型、ピック型(ピック病)、運動ニューロン疾患型の3つがあります

しかし、前頭側頭型認知症の95%以上をピック病が占めるため、ほぼピック病に相当すると考えてよいでしょう

ピック病は前頭葉や側頭葉の萎縮を示す、進行性の認知症です。アルツハイマー型認知症とは異なり、老人斑や神経原線維変化は少ないといいます

ピック病では、前頭葉によるコントロールがきかなくなり、人格変化が顕著に現れます。身だしなみに気をつかわなくなる、性的に奔放になる、ウソをつく、万引きをするなど、性格がガラッと変わってしまいます

他人に対しては、横柄で無頓着になります。質問に対してもまじめに考えず、すぐに「わからない」などと答える(考え不精)。鼻歌を歌ったり、妙にふざけたりします

また、同じことをくり返す常同行動や、甘いものを大量に食べるといった食行動の変化も、よくみられます。無意識に目を大きく見開く、びっくり眼も特徴的です

前頭側頭型認知症の特徴

前頭側頭型認知症の特徴

前頭側頭型認知症の初期は人格変化と反社会的行動が目立ちます。中期になると、自発性の低下や言語障害が現れます。末期では認知機能、身体機能ともに低下し、衰弱死に至ります。アルツハイマー型よリ進行が早く、経過年数は平均6年といいます

ピック病の場合、40〜50歳代と若い年代で発症することが多く、男女差ははっきりしていません。まれに染色体関連による遺伝性のものもありますが、ほとんどは遺伝とは関係なく発症する孤発性です

ピック病の経過は初期、中期、末期の3つに分けられます

初期から、人格の変化や反社会的な行動が強く現れます。情動(本能的感情)をつかさどる扁桃体の高度な萎縮も、人格変化に関与しています。アルツハイマー型認知症とは異なり、海馬は比較的保たれ、記億障害は軽度のことが多いです

中期には自発性が低下し、言語障害が現れてきます。同じ言葉を何度もくり返す滞続言語が特徴的です。経過年数は平均6年と、アルツハイマー型より短いです

なお、アルツハイマー型認知症で、ピック病のような病理変化をともなう症例も報告されています。記憶障害より、落ち着きがない、怒りっぽい、嫉妬妄想などの人格の変化が目立ちます

前頭側頭型認知症の対応

前頭側頭型認知症の対応

前頭側頭型認知症は初期には記憶障害がなく、人格変化や行動異常が目立ち、うつ病や統合失調症などの精神疾患と誤診されることもあります

前頭側頭型認知症は介護の面では困難が多いことが知られています。アルツハイマー病に比べ発症年齢が若く、在職中であることも多く、家庭への収入や自動車の運転などが問題となることもあります。一般的な認知症と症状が異なっているため、介護サービスの専門家も戸惑ったり、症状と気づかず患者を叱ってトラブルになることもあり、事前に意見書などで症状や特徴について詳しく記載しておくことが重要です

アルツハイマー型認知症や血管性認知症などとは必要な介護や援助が異なり、保たれている機能や症状の特徴を利用して、環境を変えたり、個人の特技や趣味を考慮した取り組みやすい課題を与えたりすることで、非適応的な行動から適応的な行動へ置き換える治療法が介護者の介護負担の軽減に有効です

デイサービスを利用することもあります

また、感情の起伏を穏やかにするために薬物(選択的セロトニン再取り込み阻害薬等)を用いることもあります。しかし根本的な治療とはならず、副作用や倦怠感からより不機嫌になることもあるため、補助として必要最小限の使用にとどめることが普通です

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