認知症の自動車事故と運転中止の説得方法【高齢者の運転】

認知症の自動車事故

認知症の人の事故が増えています

特に75歳以上の高齢者の交通事故が増えており、その中に認知症の方が随分含まれていると考えられています

認知症の方には自覚がない方も多く、家族が運転中止の説得をしても聞き入れないことがおおいものです

認知症の自動車事故が増えている理由

交通事故を起こしやすい

なぜ認知症の方の自動車事故が増えているのでしょうか

それは、免許を保有している高齢者が増えていて、高齢者が増えると認知症の割合が増えてしまうので、そのせいで認知症の人の事故が増えていると考えられます。だいたいわが国では認知症で免許を持っている人が30万人いると考えられています

認知症の人は健康な人と比べて交通事故を起こしやすい

アメリカでは、認知症の人は健康な人と比べて2.5〜4.7倍も交通事故を起こしやすいというデ—タがあります。日本でも最近の研究では認知症の人の交通事故や交通違反が徐々に問題になってきています

認知症の人は、記憶障害や判断力の低下、認知障害から運転能力や操作に支障をきたして事故を起こしやすいと考えられています。また記憶障害以外にも、交通環境や規則を守るといったことに支障をきたして事故を起こしやすくなります

認知症の人はどのような自動車事故や違反を起こすか

どのような自動車事故や違反を起こすか

アルツハイマー型認知症の方は物忘れをするために行き先や目的地を忘れてしまったり、遠近感がわかりにくくなり駐車場の枠に入れるときに隣の車との距離感がわからずぶつけたり、車庫に入れるときに壁にぶつけるなど接触事故が多いようです

アルツハイマー型認知症以外の事故の特徴

認知症の代表的な原因としてアルツハイマー病以外に血管性認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症などがあります

血管性認知症

運転中にボーッとするなど注意散漫運転、ハンドルやギアチェンジ、ブレーキペダルの運転操作ミスなど

前頭側頭葉変性症(ピック病)

信号や標識の意味がわからず交通ルール無視、わき見運転でひどいときは追突事故を起こす

認知症の背景疾患によって精神症状や行動障害には大きな違いがありますが、それと同様に運転行動にも違いがあると考えられています。そのため認知症の人の事故対策を考える場合には、認知症の背景疾患をきちんと知ることも重要です

認知症患者の運転対策

認知症患者の運転対策

2006年に道路交通法が改正されて、免許更新や事故を起こしたときに認知症ということが判明すると、認知症の人は免許の保持が制限されるようになりました

また2009年からは75歳以上の高齢者には、免許更新の際に講習予備検査といって、記憶や認知機能が行われるようになりました

講習予備検査

講習予備検査とは75歳以上の方が免許更新の際に受検する検査ですが、その結果認知症が疑われて、さらに基準行為といって一定の交通違反や事故を起こしている場合、認知症の有無を医師に判断してもらい、認知症と診断されれば、公安委員会が免許を停止します

認知症の恐れがある人にみられる運転行動の特徴

認知症患者の運転行動の大きな特徴は、

①信号無視

②一時不停止

③運転操作ができない

④進路変更不適ができない

が挙げられます

認知機能検査で免許取り消しも

認知機能検査で免許取り消し

認知機能検査の所要時間は30分程度で、内容は時間の見当識、手がかり再生、時計描画からなります。これにより、受験者を第1分類から第3分類に区分することになります

第1分類は「記憶力・判断力が低くなっている者、

第2分類は「記憶力・判断力が少し低くなっている者」

第3分類は「記憶力・判断力に心配のない者」となっています

その後、検査結果に基づいた講習が実施され免許更新がされますが、第1分類に該当する人のうち、免許期間満了日までの1年間に信号無視などの違反をしていた場合や、更新後に基準行為をした場合は臨時適性検査が行われます

臨時適性検査により、公安委員会で認める専門医またはかかりつけ医による認知症の診察で、認知症と判明すれば、免許の取り消し・停止が行われます

運転中止への説得方法

運転中止への説得方法

認知症が疑われる家族が免許を手放そうとしないときは、どのように説得すればいいのでしょうか

認知症患者は、以前に自分が事故を起こしたことをすっかり忘れていることもあり、運転をやめたがらないことも多いものです

認知症の人の多くは自分の物忘れや生活能力が低下したことを自覚することができない場合が多いためと考えられます

家族が説得しても「まだ大丈夫」と言って聞き入れてくれなったり、また、同居している他の家族にも「父の運転がなかったら病院に通えなくなるから」などと言って運転の中止を反対されたりすることもあります

車が必要な場合は難しいが…

認知症の人は自覚ができないので、単に家族が「やめなさい」と説得しても反発される場合が多いと思います

その他に重要なこととして認知症の人がどうして運転をやめたがらないのかという疑問が起こりますが、その理由として公共交通機関が少ない地域では車がないと買い物ができない、病院に通院できないといった理由や、運転が趣味である、また孫の送迎で家族に役立っているから、もしくは運転がぼけ予防になるという理由まで様々あることがわかってきました

そのため、認知症の人が運転をやめたくない、もしくはやめてしまうとその後の生活が成り立たなくなるといったそれぞれの生活状況に配慮した運転のやめ方を検討しないと、運転をやめることは難しいと思います

運転が必要な理由を話し合う

病院への通院にはタクシーを利用する、その他の家族が病院への送り迎えを代行するなどの工夫をしてみるのも一案です

運転が必要な場面を一つ一つ洗い出して、それぞれの代案を考えてみましょう

大切なのは認知症の人の運転にこだわる理由をよく相談してから、運転をやめても生活は大丈夫であるという、後のことを考えた説得の方法が重要です

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