認知症の人が詐欺に遭う理由【認知症のお金の管理】

認知症の人が詐欺に遭う

認知症の人は、しばしば詐欺の被害に遭います。

認知症患者の家族が、お金の管理や使い方をしっかり見張る必要があります。

認知症の人が詐欺に遭う理由

人に対する警戒心が低下

認知症の人が詐欺に遭うには理由があります。「だまされる脳」で何が起こっているのでしょうか?

布団を高価格で売りつけられた、数万円もするCDセットを買わされた、床下の工事を無理やり行われて数十万円支払わされたなど、被害例は枚挙にいとまがなく、詐欺的な商法をしている人たちは認知症の人を格好の標的としているようです

このような事例を紹介すると、「認知症の人は理解力が低下しているために、だまされてしまうのだ」と考えられがちです。

人に対する警戒心が低下している

しかし、認知症の人が詐欺的商法にだまされる理由は、決してそれだけではありません。人に対する警戒心が低下していることが、原因の一つであると考えられます

高価な家具を買わせるために、わざわざサラ金から借金をさせられている認知症患者もいるといいます。借金の総額は300万円を超えていましたが、その認知症患者は次々と繰り出される支払い要求にあっさりと応じていました

別の事例では、要求されるままにお金を銀行からおろして、その場で相手に渡したという人もいます。どちらも前頭側頭型認知症と診断していた患者さんで、側頭葉内側部と扁桃体が、ともに強く縮んでいたといいます

一緒に過ごし信用してしまう

オレオレ詐欺や振り込め詐欺の場合には、電話の相手を自分の子供や孫だと信じ込んでしまうところから始まりますが、認知症の人が被害に遭う詐欺的商法では状況はまったく異なります

認知症の人は、詐欺的商法の相手と長時間にわたって一緒に過ごし、すっかり信用しきってしまうのです。一緒に銀行やサラ金へ行き、その場で現金を渡します。長い付き合いの中で相手を信用していますから、詐欺だなどと疑うことはありません。警戒心がまったくないのです

このような場合には、もはや認知症患者本人との話し合いで解決することは難しく、成年後見制度の利用を含む防衛策を基本にしながら守っていくしかないと思われます

詐欺的商法をしかけた相手は姿をくらましても、サラ金での借金はそのまま残り続けます。幸い、先の事例でお金を貸したサラ金業者は、役所の担当官の立ち会いのもとで話し合いを行った結果、貸したお金を認知症の人からは回収しないこととなったといいます

淋しさから騙される

ひとり暮らしの高齢者や認知症のある方は、人との交流が少なくなり淋しさを感じています。そのため、他者から優しい言葉をかけられ親切にされると、その人を信じそして騙されるという結果になります。かなりの被害を受けない限り、騙されたと気づかない人もいます。むしろ、親切ないい人と受け止めていることも多いです。相談できる人が身近にいないことも、被害に遭う要因になっています

認知症の詐欺被害を防ぐには

認知症の詐欺被害を防ぐ

特に判断能力が低下している認知症のある方は、自らの被害を自覚して自分の意思で相談にいくということは難しいことです

普段から被害に遭わないために、消費者被害を未然に防ぐための学習会や、被害に関する情報提供などの呼びかけに参加したとしても、実際に起こっている現象とつなげて考えることは難しく、状況の理解に乏しいため、自分はしっかりしていると思っている人や、かかわりをもってくる人を親切な人と捉えてしまうことも多いものです

家族、あるいは周囲の人々が詐欺に遭う前に気づいて、守ることが必要です。また、日頃から家族や周囲の人々が、認知症のある人が悪徳商法やに遭わないように、以下のことを話題にしながら、いつも注意を喚起しておくことが必要です

詐欺を防ぐポイント

  • 顔馴染みでない人を家に入り込ませない
  • うまい話にはのらない
  • 訪問販売や電話勧誘に対してすぐには契約をしない
  • いろいろな手口があること、それに惑わされないようにする
  • 家族あるいは周囲の人々と密に連絡を取り合うこと
  • 家族あるいは周囲の人々が認知症のある人の淋しさに気づき、声をかける

認知症患者が詐欺にあった場合に相談する場所

詐欺にあった場合に相談する場所

家族あるいは周囲の人々が、認知症のある人が被害に遭っている、あるいは被りそうだと気づいた場合に、相談できる場としては、以下のところがあります

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、地域で、安心して暮らしていくために、住民を守るための働きかけをします。その機能の1つとして、高齢者の権利を擁護する支援を行っています

相談をする人は、本人、家族のみならず誰でもよいです。地域の情報を伝えて、地域ぐるみで、被害を防いでいくことも大事です。必要に応じて、地域福祉権利擁護事業や成年後見制度の活用の支援をしてくれます

消費者センタ一

消費者センターは、消費者の保護が目的であり、買い物に対する相談や商品・サービスについての苦情を受け付けています。そしてそれらの解決を支援するための、消費生活相談を行っています

悪徳商法被害で悩んでいる消費者に対して適切なアドバイスを行ってくれて、相談は無料です。身近に消費者被害に遭っている高齢者がいる恐れがある場合には、被害が大きくならないうちに相談するとよいでしょう。

地域福祉権利擁護事業

地域福祉権利擁護事業として、意思決定に支障のある認知症・知的障害・精神障害のある人の権利擁護に関する相談や日常生活の支援サービスを行う事業があります

日常的な金銭管理に不安のある方や管理が困難な方の場合には、通帳や年金証書などの書類の預かりをしてくれます。相談は無料ですが、通帳や書類の預かりなどには、利用料が必要です。市町村によって金額が多少異なります

成年後見制度

判断能力が低下している認知症のある人の場合は、成年後見制度の利用は効果的です。不利益な契約に対しては、その契約を取り消すことができます

成年後見制度は、認知症のある方など判断能力が不十分なを保護する制度です。成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります

法定後見制度は、“後見”、“保佐’’、‘補助”の3つに分かれており、判断能力の程度によって制度を選ぶことができます。この法定後見制度によって家庭裁判所で選任された人を成年後見人といい、それぞれ成年後見人、保佐人、補助人といいます

任意後見制度は、判断能力があるうちに将来に備えて代理人を決めておきます。支援してほしいことや支援者を決めて、あらかじめ契約を結んでおくものです。

地域の金銭管理サービスも検討しよう

地域の金銭管理サービス
認知症患者の家族にとって、本人が行う金銭管理や契約ごとには神経質にならざるをえません。だからといって、本人のプライドや不安を考えると「財布を預かります」とは、なかなか言えないものです

財布が別でも、同居していれば、最近はよけいなものを買い込むようになったとか、同じ野菜を毎日のように買ってくるなど、お金の使い方の変化がわかります

しかし別居なら、比較的近くに住んでいても、お金の使い方はほとんどわかりません。遠くに住んでいれば、なおのこと不安です

部屋のなかに同じようなものが無意味に、いくつも飾ってあったりしたら、金銭管理の能力を疑ったほうがいいかもしれません。それとなく聞いてみましょう。「なんで買ったのかわからない」、「すすめられたから買った」などと言うようなら、以下のサービスも検討してみましょう。このサービスは、原則本人の理解と同意がなければ受けられません(成年後見人を除く)

認知症の高齢者、知的障害者、精神障害者、虚弱な高齢者、福祉サービスの利用や金銭管理がうまくできない人などが対象です

福祉サービスの利用援助

福祉サービスを利用する際の手続き・利用料支払いの手続き・その他情報提供、諸手続き

金銭管理サービス

預貯金の出し入れ・公共料金、家賃などの支払い・年金などの受領確認

書類などの預かりサービス

預金通帳、権利証書,保険証書、実印、銀行印などの保管

「私はだいじょうぶ」と頑張っても、周囲がなぜ不安に思うのか具体例をあげて説明し、説得しましょう。子どもが金銭管理にかかわれない場合、これは特に重要です

サービスは有料

社会福祉協議会に相談すると、専門員が面接にきて、まず本人の意思を確認します。それから支援する内容を支援計画にまとめ、利用契約を結びます

内容は預貯金の出し入れなど日常的な金銭管理や、通帳や印鑑の保管、行政手続き代行など。生活支援員と呼ばれる人が、これらのサ—ビスを行います

サービスは有料です。1時間あたり1,000円、30分500円、また交通費も1キロにつき20円などと決められています。詳しくは最寄りの社会福祉協議会へ聞いてみましょう

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