高齢者で「年のせい」を超えた物忘れを疑うべき特徴として、自分が主体的に関わった出来事そのものを完全に忘れている、指摘されても思い出せないということがあります
そこで、「最近のニュースは何ですか?」というフレーズが、高齢者の加齢の範囲を超えた記憶障害を見分ける方法として有効です
年のせいを超えた物忘れとは
一般的には、固有名詞やドラマの名前を忘れるという程度のことは、お年寄りではみられます。でも、自分が主体的に関わった出来事を完全に忘れているというのは「年のせい」を超えた物忘れのことが多いです
それから、「指摘されても思い出せない」のも年のせいを超えた物忘れの特徴です。ですから、例えば、自分で電話をかけたことを忘れて、それを指摘されても覚えていないという物忘れがあった場合は要注意です
自分が関わった出来事を忘れている
高齢者で「年のせい」を超えた物忘れを疑うべき特徴はいくつかありますが、1つは、自分が主体的に関わった出来事そのものを完全に忘れている場合です。
買い物の途中で知り合いに会ったことを忘れているということは、高齢者ではしばしばみられますが、買い物に行ったこと自体を忘れている場合には「年のせい」を超えた物忘れが強く疑われます
また、経験したことを自由にそのまま思い出す「再生」よりは、ある事柄を経験したかどうかを確認する「再認」の質問のほうが容易だと考えられています
たとえば、「昨日のタ食は何を食べましたか?」と聞かれると答えられない方でも、「昨日のタ食はカレーでしたか?」という質問はやさしいというわけです。したがって、再認もできない場合は、「年のせい」を超えた物忘れを疑うきっかけになります
「取り繕い応答」で認知症を見分ける
という質問に対して、
という答え
取り繕い応答
上の「忙しくて頭に入ってない」という回答は、「取り繕い応答」といって、「年のせい」を超えた物忘れがあるお年寄りが、物忘れを周囲に知られたくない、恥ずかしいという思いで発するメッセージです
ですから、あえて否定せずに「忙しかったんだ」とその回答を受容し、その思いを理解してあげる必要があります
高齢者に、加齢の範囲を超えた記憶障害が存在するか否かを区別する方法として、「最近のニュースは何ですか?」というワンフレーズはとても有効です
健常高齢者はその時々に合った適切な回答をしますが、認知症患者では、「わからない」という応答や時節に外れた不正確な応答のほかに、「忙しくてニュースをみていない」、「特に注意してないので、覚えていない」「目がみえづらく新聞を読まなくなった」など、様々な取り繕い応答をします
その時々に合った応答を正解として、「取り繕い応答」を含めた不正解と区別することで、認知症の90%以上、軽度認知障害例でも半数以上を見分けるすることが可能です
その物忘れは「年相応」?「認知症のせい」?
「人の名前が思い出せない」「ドラマのタイトルが思い出せない」などは年をとると、よくあることです
「この人、あれじゃない、去年やっていたあのドラマに出演していた……ほら、あの人じゃない?」という具合に、会話の中にその、あの、それなどのいわゆる指示代名詞がたくさん出てくるようになります。老化によって起こる生理的な記憶力の低下です
一方、認知症では、年のせいを超えた、程度の重い物忘れがみられます
たとえば、自分が主体的に関わった出来事そのものを完全に忘れているというときは、年のせいを超えた物忘れを疑う必要があります。「自分から電話したこと自体を忘れている」自分で外出したことを忘れている」などは注意が必要です
しかし「電話で聞いた内容のー部を忘れる」「外出先で人と出会ったことを忘れる」などは、健康なお年寄りでもみられます
また、年相応の物忘れでは、忘れていても、指摘されれば「ああそうだった」と思い出せることが多いのですが、指摘されてもまったく身に覚えがないというときには、年のせいを超えた物忘れを疑う必要があります