認知症高齢者の咀嚼・嚥下、誤嚥トラブルの対応法

食物を認知し、ロに入れ、咀嚼することは、大脳皮質によってコントロールされています。咀嚼や嚥下の障害は、一般高齢者にも見られるものであり、その原因や要因としては歯の喪失や咀嚼(筋群)筋力の低下、唾液分泌量の減少、咽頭・喉頭の反射機能の低下などがあげられます

しかし、認知症高齢者の場合、これらの原因や要因に加えて、認知症の進行とともに、咀嚼・嚥下をつかさどる中枢神経系の障害によって食物の口腔内の溜め込みや口腔外への漏出が見られることがあります

危険な咀嚼・嚥下障害

咀嚼・嚥下障害

認知症高齢者にとって咀嚼や嚥下の障害は、誤嚥性肺炎や窒息を引き起こしかねず生命をも脅かしかねません

認知症高齢者の家族介護者は、日々の生活の中で認知症高齢者の咀嚼・嚥下機能の状態を見極め、それらの障害を引き起こす原因や要因を迅速かつ的確にとらえる必要があります

家族や家族介護者に加え、主治医・ホームヘルパーをはじめとするほかの保健・医療・福祉専門職者との連携のもと、咀嚼・嚥下障害の予防・改善と安定した咀嚼・嚥下機能の維持・句上を図り、緊急時を含めて家族介護者やホームヘルパーが的確に対応できるようにします

また、認知症高齢者の咀嚼・嚥下障害にかかわる介入は、食事摂取や栄養状態、口腔内のトラブルに対する介入と並行して取り組む必要があります

認知症高齢者の咀嚼・口腔内トラブル

  • むせやすい・誤嚥しやすい
  • 口腔内の食べ物の溜め込み、飲み込まない
  • 吐き出し・口から多量の食べ物漏出
  • 充分に嚙まずに飲み込もうとする
  • 咀嚼しようとしない
  • 窒息

高齢者認知症の咀嚼・嚥下対策

高齢者認知症の咀嚼・嚥下対策

食物を口腔内に溜め込んだままで嚥下できないことがあります。認知症高齢者にとって咀嚼・嚥下がうまく行えないことはまれではありません

食物を荒く刻んだり、細かく刻むばかりでなく、状況によってはペースト状やゼリー状にします。また、「ごっくん、ごっくん」「飲み込んでください」というような声かけを行ってみるとよい。加えて、少量の食物ではロの中でうまく食塊が形成されないので、多すぎず少なすぎない量の食物をロに入れるようにします

誤嚥性肺炎は、いうまでもなく誤嚥によって引き起こされるものであることから、誤嚥しないように食事を摂取することが大切です。食事介助を行う際には、認知症高齢者の顎が少し下方に引かれるようにして、ーローロ嚥下したことを確認します

誤嚥してむせた場合には、カップ状にした手のひらで第7頸椎部分(首の背の付け根)をしっかり数回にわたって叩きます。また、背部全体のタッピングもしっかり行います。加えて、訪問時の肺音の聴取は必ず行うことが大切です

正しく咀嚼・嚥下させる工夫

  • 咀嚼・嚥下をうながす声かけ(「よく嚙んでください」「ごっくん・ごっくん、飲み込んでください」など)
  • 食事形態の工夫(荒くきざむ、ペースト状、とろみをつける)
  • 摂食時の姿勢の調整(90度の座位姿勢、上半身を起こす、顎を少し引いた状態など)
  • 嚥下体操(舌の運動、頰部のマッサージ)
  • 食事摂取の介助(食物の漏出がある場合はスプーンにすくった食物を5の中央部に置くようにする、ーさじーさじ嚥下を確認しながらスプーンを口に運ぶようにするなど)
  • 食後の口腔ケア

嚥下体操の方法

  1. 深呼吸
  2. 首を回す
  3. 首を倒す
  4. 肩の上げ下け
  5. 両手を挙上しての背伸び
  6. 頰の膨らましとすぼめ
  7. 舌を前に突き出す・舌で左右の口角を触れる
  8. 大きく息を吸って止めてゆっくり息をはく
  9. パパパラララ力力力(噪下する時の舌の位置と同じ)とゆっくり言う
  10. 深呼吸

などの手順を踏みます

用具を用いることなく座位姿勢でレクリエーション的に行える毎日、定期的に行うとよいでしょう

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする