認知症による認知の障害は、自らの意思で飲み水を手にすることや飲水することを困難にします
在宅で療養・生活する認知症患者の場合、一般高齢者以上に水分が補給できない状況や脱水におちいりやすいです。また、慢性・持続的な水分や食物の摂取不足は、急激な全身状態の悪化をもたらすことにもなりかねず、認知症患者の、生命を脅かしかねないことは言うまでもありません
脱水状態と水分補給
認知症患者やその家族は、日々の生活の中で認知症患者の脱水状態や水分補給の状況を見極め、それら障害を引き起こす原因や要因を迅速かつ的確にとらえていく必要があります
家族や家族介護者に加え、主治医・ホームへルパーをはじめとするほかの保健・医療・福祉専門職者との連携のもと、脱水の予防・改释と安定した水分補給の維持・向上を図り、緊急時を含めて家族介護れやホームへルパーが的確に対応できるようにします
また、認知症高齢者の水分補給にかかわる介入は、咀嚼・嚥下障害、食事摂取や栄養状態、口腔内のトラブルに対する介入と並行して取り組む必要があります
特に、時々脱水を起こす、脱水傾向におちいりやすい、過去6か月間に脱水を起こしたことがある場合は注意が必要です
水分補給が必要な場面
入浴による脱水症状
40℃の湯で10分間を要した入浴では約500mlの発汗があると言われています。また、睡眠中の水分喪失は約350mlとも言われています。入浴前後や起床時の速やかな水分補給は欠かせません
室温・湿度の調整
認知症高齢者にとっての室温は若年層より2〜3℃高めの温度を目安とします。一般に冬季は19〜22℃、夏季は20〜24℃。湿度は60%程度が目安となります。ただし、いずれも個別対応が原則です
認知症患者の脱水症状を予防するために
在宅で生活・療養している認知症患者の場合、脱水症状を引き起こしかねません
1日の水分摂取目標量(飲料水で1500ml前後、食事に含まれる水分で700〜800ml)を定めて認知症患者に説明しても主体的な実行が困難であったり、また、家族介護者は、認知症高齢者の拒否やほかの介護対応に意識が集中し、水分摂取の重要性に対する認識が希薄であったりします
認知症患者のいつもと違う言動や行動の反応の鈍さに「様子がおかしい」と気づくものの、そのような時には、すでに脱水状態で医療処置を必要とすることもまれではありません
認知症患者の周囲にいるものが脱水の予防を意識して統ーした対応に取り組んでいくことは、脱水発熱や脱力感などの身体の苦痛や体調の変化に対する不安を増大させないことを意味しています
脱水症状の予防方法
- 脱水症状(意識、尿量、体温(脱水発熱)、脈拍、血圧、皮膚の乾燥、体重など)を確認
- 飲水への対応(声かけ、決まった時間に水・電解質補正用の飲料水摂取のうながし、お茶や電解質補正用ゼリー摂取のうながし、夏は冷たい飲み物・冬は温かい飲み物のうながし、食事摂取・補食のうながしと介助、飲水の予定を記した行動予定表の掲示、入浴後や発汗が多い時は水分摂取量を増やすなど)
- 食事形態の工夫(ゼリー状、ペースト状、とろみをつけるなど)
- 衣類の調節
- 環境の調整(室温・湿度の調整)