認知症になって笑わないのが心配。【認知症と笑い】

認知症と笑い

認知症にかかった家族が笑わなくなって心配だという人は多いのではないでしょうか

ここでは認知症と笑いについて解説します

認知症になると笑わない人が増える

認知症になると笑わない

認知症になると、笑わない人が増えていきます。家族も介護にあたる人たちも、懸命に笑わせようと努力するのですが、なかなか笑ってくれません

健康な人であれば、笑う・笑わないは個人の範囲内ですが、病気で笑いを失っているのは気がかりです。「笑いを取り戻す」治療が可能であれば、ぜひ試みてみたいところです

この笑いも従来は研究の難しい分野とされてきましたが、最近になって徐々に解明が進んできました

ユーモアの理解

ユーモアの理解

人が笑うためには、まずユーモアを理解することが必要です。通常の笑い(楽しい笑い)は、
ユーモアの理解があって初めて発生します

他方、ユーモアの理解を必要としない笑いも存在します。「社会的な笑い」と呼ばれるもので、作り笑いや自虐的な笑いなどがこれにあたります

上司が笑うのでそれに合わせて笑う作り笑い。チャンスに三球三振でアウトになり、ベン
チに戻るバッターが浮かべる自虐的笑い。現代社会においては、このような社会的な笑いを余儀なくされる機会のほうが目立つかもしれません

ユーモアの理解は、脳内のどのような機構によって行われているのでしょうか?

認知症ではユーモアの理解の処理を行う後頭葉や側頭葉、前頭葉などの脳領域が侵されることが少なくありません。その結果としてユーモアの理解に支障が出て、楽しい笑いが起きなくなると考えられます

「笑う」という動作そのものを起こす働きは、ユーモアの理解とはまったく異なる脳の部位で行われています。「前頭葉基底ループ」と呼ばれる脳機構によって笑いの命令が発せられています

前頭葉基底ループとは、運動と表情形成のネットワークです。自らの意思で運動を行う運動野(随意運動中枢がある)が含まれていないことが特徴です。つまり、楽しい笑いとは、意思で笑うのではなく、自然に笑ってしまうものなのです。これに対し、作り笑いの際には運動野が反応しており、自らの意思で「笑おう」「笑うしかない」などと考えて笑っています

笑いの能力が残っているかどうか

働きの低下している脳領域を診断することで、ューモアの理解や楽しい笑いの能力が残っているかどうかを、ある程度把握できます。笑いを忘れてしまったかのような認知症患者の脳は、脳の広範囲な障害を示しています

脳検査の結果、ユーモアの理解や笑いの能力が残存していると推測される認知症患者に対しては、大いに笑いのコミュニケーションをとってみましょう。

笑いは、不眠症の改善や免疫力の強化、疼痛の緩和などの効果が期待されており、精力的に研究されています。認知症に対する明白な効果が確認されているわけではありませんが、何らかのよい影響が期待できると考えています。

笑わない認知症は幸福か不幸か

笑わない認知症は幸福か不幸か

認知症の人は、自分自身を「不幸な人」と考えているのでしょうか?あるいは「幸福な人」と思っているのでしょうか?

そのような自省的な問いかけを考えたり感じたりしなくなるのが、認知症という病気の特徴であることは事実です。しかし、認知症の人をみていると、いつもニコニコしている人もいれば、ほとんど笑わずに過ごしている人もいます。また、不幸な人生を送ってきたことを悔いるような言動を繰り返す人もいます

自分は幸福か、あるいは不幸か、という問題は、実はかなり主観的なものです。お金持ちでよい暮らしをしており、幸福そうにみえる人でも〈自分は不幸だ〉と嘆いている人がいます。他方、貧しく厳しい生活をしている人であっても、自分を幸せだと思っている人もたくさんいます

認知症の人が感じる幸福感

自分について喜びの感情をもっているときの脳の状態を観察すると、線条体内側部、前頭葉弁蓋部皮質、前部帯状回(前帯状皮質)などが活動しているという研究結果が出ています。喜びと幸福感とは違いますが、この研究では美味しいものやお金をもらったという場面での感情を、喜びの感情として測定しています

精神的なものによる喜びは、線条体などに強く表れるという指摘もあります。幸福感という感覚の所在地が線条体や前部帯状回であるとする考え方は、有力な仮説であると思われます。こうした悩領域が保存されながら認知症が進行していく場合には、幸福感が続くのかもしれません

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