自分に認知症の疑いがある場合、病院に行くことを嫌がることが多いものです
そんな認知症の疑いがある親に受診を勧めることには、大きなメリットがあります
もくじ
医者に行くのを嫌がる気持ちを理解する
認知症を発症した人の「なんとかごまかしていたい」気持ちは、家族でも理解するのがむずかしいです
家族が「認知症では?」と疑っても、本人は、意識していても認めることは少なく、医者に連れていこうとすると抵抗します
このすれ違いはどうして起こるのでしょうか
認知症を隠す気持ち
ある小説にあった話で例えてみましょう。ある朝、起きると自分が虫になっていたという、チェコの小説家カフカの小説「変身」の話です。もし、私が虫になったとしたらどうするだろう、と想像してみるのはどうでしょうか
ショックでだれにも会いたくない、悪い夢ならさめるはずだ、もう少し様子をみよう、という気持ちになる、それが普通ではないでしょうか
「隠しておこう、だから助けは呼ばない……」認知症が忌み嫌われた時代に親世代は生きてきました
そのうえに、認知症特有の、自分に不利なことは認めないという、自己保存本能のような症状が加わるのです
認知症の疑いのある親には病院を勧めるべき
病院に行こうと言うと抵抗するので、だましてでも連れていこうか、と家族は悩みます。
ですが、病院に着くとうそがバレて怒らせ、診察を拒まれ、連れ帰っても不信感をもたれ二度と行かないと意固地になったりして、あとあといいことはありません
受診を真剣に頼む
認知症の専門医によると、本人や家族にとって一番いいのは、真剣に頼むことだといいます
家族が真剣に、
「近頃のもの忘れは少しおかしいから、調べてもらいに行きましょう、もしかしたら病気かもしれないから」
と真剣に言うと、大部分の方が案外、素直に来てくれるのだそうです
また、本人にとって少し遠慮のある人、たとえば親戚やかかりつけ医に頼んで診察に行くようにと言ってもらい、そのまま連れ出すとうまくいく場合もあります
症状が進み、記憶をもっていられる時間が狭くなっている場合は「散步にでも」と出かけそのまま受診しても混乱は起きません
深刻な認知症の症状が出てからでは手遅れ
アルツハイマー型の認知症は、何年もかけてゆっくりと進行します。初期のころは、いっしょに暮らす家族も、もの忘れがあっても「年たから」とあまり気にしません
ボヤを出す、行方不明になる、などの重い症状が出てから病院へ行くというのが一般的ですが、これでは遅いです
今は進行を抑える薬があるのです。もちろん効く人と効かない人がいますし、進行を抑える期間もまちまちですが、試したほうがいいに決まっています。また薬を飲むなら、1人で暮らす力があるうちに飲み始めたほうが合理的です
また、認知症の症状の裏には、治る病気が隠れていることもあります。そういう場合は、適切な治療をすれば、認知症の症状が消えることもあるのです
早めの病院受診のメリット
たとえば、長年父母と暮らしている弟から「母の様子がおかしい」と招集。長男夫婦が帰ってみたけれど、母の言動はどこもおかしくありません
それで「もう少し様子をみよう」となってしまい、病院での受診が半年、1年、遅れるということがとても多いのです
認知症の発症は、身近にいる人の「なんだかヘン」で気づかれるのですが、初期ではまだらに症状が出るので(客の前ではしゃんとしているなど)、異常を共有するのがむずかしいのです
また、近親者は認知症であるということを恐れ、認めたくないという心理が働きます。しかし徘徊やボヤ騷ぎなどが起きると、あっという間に症状が悪化して、暮らしは危機的状況になります
子どもが仕事も家庭も放り出して駆けつけなければならないことにもなります
しかし、認知症には打つ手がない、なにをしても進行してしまうというのは過去の認識です
今は個々の個性にあった介護やかかわりで認知症の症状を抑え、穏やかに寿命をまっとうできる病であると認識されています
子どもたちが介護するにも、社会的介護を受けるにも、計画を立て、調整する時間が必要です。病院受診が遅れると、いいことは1つもありません
早期の受診のメリットまとめ
- 認知症に似た症状が出る病気を発見できる
- かかりつけ医を持つことが出来る
- 家族のまとまり(団結)ができ、将来の介護に備えられる
- 認知症だと診断されれば、進行を抑えられる